こころの定期便 ~2025.7.21~
「そろそろ職場に戻ったほうがいいのかな……」
休職期間が続いていると、そんな思いが頭をよぎることがあるかもしれません。でも、「もう大丈夫」と自信を持つのは、簡単なことではありません。
そこで今回は復職を前向きに検討できる時期かどうかを判断するための視点をご紹介します。
精神状態が安定している、生活リズムが整っている、復職したい気持ちが強まっている、今後体調を維持するための方法などを検討できているといった点がポイントになることが多いでしょう。
1.精神状態が安定すること
悲しい、辛い、不安が強い、自分を責めてしまうといった症状が減って、以前の元気だった自分に回復すること、以前のように自分の好きだったことが楽しめるようになっていることが必要になるでしょう。
生活リズムの話にもつながりますが、朝起きた時にすっきり起きられる、3食食べたいなという気持ちが出る、寝つきが良くなり、寝ている時に途中で目が覚めてしまうことが減って、以前のように睡眠が取れるようになることも大切なポイントです。
2.生活リズムが整うこと
決まった時間に入眠できて、仕事をしていた頃に起床していた時間に起床する、日中は頭を使う作業をして以前のように集中できることを確認する、また、運動やジム、散歩などの体を動かすような活動がある程度できていることが望ましいでしょう。
3.復職したい気持ちが強まってくること
復職に際して、不安があることは当然のことです。ただ、その分復職したいという気持ちがある程度高くないとその不安を乗り越えることは難しくなります。
復職の意欲が出ないという場合は大きく分けると①うつが良くなっていない、②休職する時にハラスメントなどの怖い思いをしたため、復職したいという気持ちになれない、というパターンに分けられるでしょう。
①の場合は、うつ症状自体を改善する必要がありますので、主治医の先生と治療方針についてよく相談するようにしてみましょう。内服をしないで長期に渡り改善しない場合には、内服するのも一つの手かも知れません。せっかくここまで薬を飲まずにきたのに、と思うかも知れません。ただ、復職に際してかかるストレスは相応のものがありますから、十分にうつ症状が改善していないとそれに耐えられないことも少なくありません。ぜひ相談してみましょう。
他方で、休職前にハラスメントなどを受けて、怖い思いをしたため、復職したいと思えないというケースも少なくありません。これはある種当然のことです。この点については次週のブログで触れたいと思います。
4.体調を維持するための方法を検討しておくこと
業務量が多かった、人間関係が悪かった、昇進したなどの環境の変化があったなど体調を崩される理由は様々でしょう。職場環境を整えてもらうことで円滑に復帰できるようになることは多いでしょう。ただ、ずっとその配慮が続くかは分かりませんし、何かのきっかけで再び業務量が増えてしまう、ということは十分ありうることでしょう。その場合にどう対処したら良いのか、そして、普段の自分の体調を今までよりもより一段高めていくにはどうしたら良いのか、などは考えておくと今後の皆さんの人生にとって大きな財産になるでしょう。
誠実にお仕事をされる方の多くが、業務量が多くて困っていることについて相談できずに、体調が悪くしてしまったというケースは多い印象です。今後は早めに上司に相談する、医療機関に早めに受診するなどの対策は有効になるでしょう。
朝決まった時間に起きて朝日を浴びる、夜決まった時間に寝る、ジムに行くなど運動をするようにする、などの日常生活の習慣を改善することで、元気になりましたと話される方も多いです。休職中に築いた良い生活習慣を継続することも大切な対策と言えるでしょう。
最後に外来をしている中で主治医としていつも悩むことについて書かせて頂いてまとめとしたいと思います。
主治医として患者さんの復職を応援するのは当然のことですが、一方でいつ復職したいですか?などと外来で聞くと無用なプレッシャーを与えてしまうかなと考えてしまうことは私自身よくあります。こういったケースだと、患者さんがご自身で復職したいと訴えてきてもらわないと、復職に繋げることが難しくなります。
いつになったら元気になって復職できるのだろうと思いながら、様子をみましょうかと言われて通院中の患者さんも多いと思います。早く復職したいけど、なかなかうつ症状が良くならなくて困っているという場合には、積極的にその旨主治医に伝えるようにしてみてください。うつ症状が改善していないというケースでは薬剤調整をしたり、生活習慣の見直しをすることで良くなるきっかけが得られるかも知れません。もしこのままのペースだと復職できなさそうと感じておられる場合には、積極的にその旨を主治医に伝えていただけたらと思います。なかなか良くならないし、そういったことを伝えても、主治医の先生はお薬を変えてくれたりしないなという場合には別のクリニックなどにかかってみることも検討してみましょう。
それではまた次週のブログでお目にかかりましょう。今週も皆様にとって素敵な1週間となりますように。