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不登校〜なぜお子さんは学校に行きたがらなくなるのでしょうか〜

「朝になるとお腹が痛くなる」「行こうとすると涙が出てしまう」――そんな経験をしているお子さんは少なくありません。近年、不登校の子どもは全国的に増えており、文部科学省の調査では小中学生あわせて30万人を超えると報告されています。これは決して「特別な子」だけに起きていることではなく、誰の家庭にも起こりうる身近な問題です。

多くの保護者の方は「なぜうちの子が?」と戸惑い、時には「甘えているのではないか」「怠けているのでは」と考えてしまうこともあるかもしれません。しかし、不登校の背景には必ず理由があり、それは本人の努力不足や性格の弱さでは説明できないものです。本記事では、子どもが学校に行きづらくなる背景や関連するメンタルヘルス不調について整理してみたいと思います。

 

学校に行きづらくなる背景

学校での要因

学校での人間関係 友達にうまく話しかけられない、友達の輪に入りづらいといったことからいじめに至るまで色々な人間関係がご本人の不全感の要因になり得ます。

学業の不振、勉強に興味が持てない 勉強についていけない、成績が下がることによる自信喪失が学校に行きたくない気持ちにつながることもあります。また勉強に興味が持てないから学校に行きたくないというケースも近年少なくありません。

教師との関係 相性の合わない先生がいる場合、それが登校をためらう要因になることもあります。直接お子さんが叱られているわけではないのですが、先生が他のお子さんを厳しく叱責する様子を見て学校に行きづらくなるお子さんもおられます。

 

家庭での要因

親からの期待やプレッシャー
「いい成績をとってほしい」「しっかりしてほしい」といった親の思いが強く伝わると、子どもは「応えなければ」という気持ちで疲れてしまい、学校に行く意欲をなくすことがあります。

家庭内の不安定さ
夫婦の不和、家計の心配、兄弟姉妹との比較など、家庭の雰囲気が落ち着かないと、子どもにとって学校はさらに負担に感じられることがあります。

安心させたい気持ちが裏目に出るケース
「無理しなくていいよ」と休ませることが続くと、子どもにとっては行かなくてもいい環境になってしまい、登校がますます難しくなることもあります。

 

社会的な要因

デジタル環境の影響
SNSやオンラインゲームを通じての人間関係トラブル、誹謗中傷、見えない比較などは、表面上では分かりにくいけれど子どもに深い傷を残すことがあります。

社会の変化と価値観の揺らぎ
「学校に行って当たり前」「みんなと同じであるべき」という考え方が薄れ、さまざまな生き方が受け入れられるようになってきました。その一方で、子ども自身も「学校に行く意味」を見失いやすくなっています。

教育や進路への不安感
受験競争や将来への見通しの不透明さが、学校生活そのものを重圧に感じさせることがあります。学力や進路に関する不安が、不登校の背景になることもあります。

 

不登校に関連する病気や状態像

不登校には「性格の甘え」や「怠け」といった誤解がつきまといがちですが、実際には医学的な背景や心身の状態が深く関わっていることがあります。ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。

生活リズムの乱れ

夜更かしや朝起きられないといった生活リズムの崩れは、不登校の入り口としてよく見られます。一度リズムが崩れると、学校に行けない → さらに夜型になる → 行きにくくなる、という悪循環に陥ることもあります。

ゲームやSNSへの依存

ゲームやSNSは一時的に安心感や居場所を与えてくれますが、使い過ぎると学校生活から遠ざかる原因になってしまうこともあります。「現実よりもネットの世界のほうが楽」と感じるようになると、登校のハードルが一層高くなります。

不安障害

「学校に行くと強い不安が出る」「教室でみんなからの視線を感じて不安になってしまう」「みんなと給食を食べることができない」といった症状が見られることがあります。頭痛や腹痛など体の不調として現れることも多く、本人や周囲が気づきにくいのが特徴です。

うつ状態

気分の落ち込み、意欲の低下、楽しめることが減るなどの状態が続くと、登校どころか日常生活自体がつらくなります。不登校の背景に「うつ状態」が潜んでいるケースも少なくありません。

起立性調節障害

自律神経の働きの不調によって、朝に強い倦怠感や立ちくらみ、頭痛などが出る病気です。周囲からは「怠けている」と誤解されやすいですが、医学的に説明のつく症状であり、不登校の大きな要因になることがあります。

発達障害(ASD・ADHD)

発達障害の特性があると、学校生活で「人間関係が難しい」「集団行動がつらい」「集中が続かない」といった困難を抱えやすくなります。適切な支援や理解が得られないと、不登校につながるケースもあります。

 

不登校は「怠け」ではなく「サイン」

不登校を「学校に行けない」という行動だけで捉えると、どうしても「なぜ行かないのか」という問いに終始してしまいます。しかし大切なのは、その行動の裏にある子どもの心の声に耳を傾けることです。

「お腹が痛い」「眠れない」「朝起きられない」といった身体の症状も、心のSOSの表れであることが少なくありません。無理に登校を迫ると、かえって症状が悪化してしまうこともあります。

不登校の背景には、学校・家庭・社会・個人といった多くの要素が絡み合っています。さらに、不安症やうつ、発達特性といった医学的な要因が関わることもあります。つまり「サボり」や「甘え」で片づけられるものではなく、「子どもからのサイン」として理解することが第一歩です。

次回は「どのように子どもと関わると良いのか」をテーマに、保護者がとれる具体的な対応について取り上げます。

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不登校〜なぜお子さんは学校に行きたがらなくなるのでしょうか〜

「朝になるとお腹が痛くなる」「行こうとすると涙が出てしまう」――そんな経験をしているお子さんは少なくありません。近年、不登校の子どもは全国的に増えており、文部科学省の調査では小中学生あわせて30万人を超えると報告されています。これは決して「特別な子」だけに起きていることではなく、誰の家庭にも起こりうる身近な問題です。

多くの保護者の方は「なぜうちの子が?」と戸惑い、時には「甘えているのではないか」「怠けているのでは」と考えてしまうこともあるかもしれません。しかし、不登校の背景には必ず理由があり、それは本人の努力不足や性格の弱さでは説明できないものです。本記事では、子どもが学校に行きづらくなる背景や関連するメンタルヘルス不調について整理してみたいと思います。

 

学校に行きづらくなる背景

学校での要因

学校での人間関係 友達にうまく話しかけられない、友達の輪に入りづらいといったことからいじめに至るまで色々な人間関係がご本人の不全感の要因になり得ます。

学業の不振、勉強に興味が持てない 勉強についていけない、成績が下がることによる自信喪失が学校に行きたくない気持ちにつながることもあります。また勉強に興味が持てないから学校に行きたくないというケースも近年少なくありません。

教師との関係 相性の合わない先生がいる場合、それが登校をためらう要因になることもあります。直接お子さんが叱られているわけではないのですが、先生が他のお子さんを厳しく叱責する様子を見て学校に行きづらくなるお子さんもおられます。

 

家庭での要因

親からの期待やプレッシャー
「いい成績をとってほしい」「しっかりしてほしい」といった親の思いが強く伝わると、子どもは「応えなければ」という気持ちで疲れてしまい、学校に行く意欲をなくすことがあります。

家庭内の不安定さ
夫婦の不和、家計の心配、兄弟姉妹との比較など、家庭の雰囲気が落ち着かないと、子どもにとって学校はさらに負担に感じられることがあります。

安心させたい気持ちが裏目に出るケース
「無理しなくていいよ」と休ませることが続くと、子どもにとっては行かなくてもいい環境になってしまい、登校がますます難しくなることもあります。

 

社会的な要因

デジタル環境の影響
SNSやオンラインゲームを通じての人間関係トラブル、誹謗中傷、見えない比較などは、表面上では分かりにくいけれど子どもに深い傷を残すことがあります。

社会の変化と価値観の揺らぎ
「学校に行って当たり前」「みんなと同じであるべき」という考え方が薄れ、さまざまな生き方が受け入れられるようになってきました。その一方で、子ども自身も「学校に行く意味」を見失いやすくなっています。

教育や進路への不安感
受験競争や将来への見通しの不透明さが、学校生活そのものを重圧に感じさせることがあります。学力や進路に関する不安が、不登校の背景になることもあります。

 

不登校に関連する病気や状態像

不登校には「性格の甘え」や「怠け」といった誤解がつきまといがちですが、実際には医学的な背景や心身の状態が深く関わっていることがあります。ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。

生活リズムの乱れ

夜更かしや朝起きられないといった生活リズムの崩れは、不登校の入り口としてよく見られます。一度リズムが崩れると、学校に行けない → さらに夜型になる → 行きにくくなる、という悪循環に陥ることもあります。

ゲームやSNSへの依存

ゲームやSNSは一時的に安心感や居場所を与えてくれますが、使い過ぎると学校生活から遠ざかる原因になってしまうこともあります。「現実よりもネットの世界のほうが楽」と感じるようになると、登校のハードルが一層高くなります。

不安障害

「学校に行くと強い不安が出る」「教室でみんなからの視線を感じて不安になってしまう」「みんなと給食を食べることができない」といった症状が見られることがあります。頭痛や腹痛など体の不調として現れることも多く、本人や周囲が気づきにくいのが特徴です。

うつ状態

気分の落ち込み、意欲の低下、楽しめることが減るなどの状態が続くと、登校どころか日常生活自体がつらくなります。不登校の背景に「うつ状態」が潜んでいるケースも少なくありません。

起立性調節障害

自律神経の働きの不調によって、朝に強い倦怠感や立ちくらみ、頭痛などが出る病気です。周囲からは「怠けている」と誤解されやすいですが、医学的に説明のつく症状であり、不登校の大きな要因になることがあります。

発達障害(ASD・ADHD)

発達障害の特性があると、学校生活で「人間関係が難しい」「集団行動がつらい」「集中が続かない」といった困難を抱えやすくなります。適切な支援や理解が得られないと、不登校につながるケースもあります。

 

不登校は「怠け」ではなく「サイン」

不登校を「学校に行けない」という行動だけで捉えると、どうしても「なぜ行かないのか」という問いに終始してしまいます。しかし大切なのは、その行動の裏にある子どもの心の声に耳を傾けることです。

「お腹が痛い」「眠れない」「朝起きられない」といった身体の症状も、心のSOSの表れであることが少なくありません。無理に登校を迫ると、かえって症状が悪化してしまうこともあります。

不登校の背景には、学校・家庭・社会・個人といった多くの要素が絡み合っています。さらに、不安症やうつ、発達特性といった医学的な要因が関わることもあります。つまり「サボり」や「甘え」で片づけられるものではなく、「子どもからのサイン」として理解することが第一歩です。

次回は「どのように子どもと関わると良いのか」をテーマに、保護者がとれる具体的な対応について取り上げます。