「ゲームでADHDの治療?」と聞いて、驚かれた方もいるかもしれません。
小児ADHDの治療を補助するゲーム形式の医療機器「エンデバーライド」が、2026年6月1日に保険収載され、同年6月5日に発売されました。薬でも一般的なゲームアプリでもなく、医師の指示のもとで使用するプログラム医療機器です。
ただし、ADHDと診断された方が誰でもすぐに使用できるものではありません。今回は、期待できる効果だけでなく、対象となる条件や研究上の限界についてもお伝えします。
エンデバーライドは、6〜17歳のADHDのお子さんを対象とした治療補助アプリです。対象となるのは「不注意と多動・衝動性がともにみられる状態(混合型)」または「不注意が優勢にみられる状態」の患者さんです。米国のAkili社が開発した技術をもとに、塩野義製薬が日本で開発・販売しています。
治療の中心となる環境調整、学校や家庭での支援、心理社会的治療を置き換えるものではありません。また、薬物療法と直接比較した試験はなく、薬より強く効く、あるいは薬の代わりになると証明された治療ではありません。
画面上の乗り物を端末の傾きで操作しながら、特定の対象が現れたときに画面をタップします。
「進路を操作すること」と「必要な刺激だけに反応すること」という2つの課題を同時に行い、利用者の反応に応じて難易度が自動調整されます。こうした仕組みによって、注意機能や認知制御に働きかけることを意図した設計です。
ただし、臨床試験で確認されたのは症状評価尺度などの変化であり、個々のお子さんの前頭前野が直接「鍛えられた」ことを確認する検査ではありません。
国内では、6〜17歳のADHD患者164名を対象とした臨床試験(A3831試験)が行われました。
環境調整や心理社会的治療にエンデバーライドを追加したグループでは、心理社会的治療のみを継続したグループと比べ、6週間後の医師評価による不注意スコア(ADHD-RS-IV不注意スコア・主要評価項目)が統計学的に有意に改善しました。群間差は−2.97点でした(p<0.0001)。
また、副次的な評価項目である合計スコア(群間差−4.56、p<0.0001)と多動/衝動性スコア(群間差−1.55、p=0.0056)でも有意な改善が見られました。主に評価されたのは不注意症状ですが、多動・衝動性についても改善の可能性が示されています。
一方、この試験は偽アプリを用いた二重盲検試験ではなく、患者さんや評価者が使用の有無を把握している非盲検試験です。そのため、治療への期待などの影響を完全には除外できません。
「薬とどちらが効くのか」はよく聞かれる質問ですが、薬物療法と直接比較した試験はないため、どちらが強く効くかを判断することはできません。また、薬物療法の代わりになることを証明した試験でもありません。
保険診療で使用するためには、患者さん側と医療機関側の両方に条件があります。
患者さんについて
したがって、ADHDと診断された直後に、誰でもすぐ開始できる治療ではありません。これまで家庭や学校、医療機関で行われてきた支援内容と、その効果を確認して適応を判断します。
医療機関について
このように、医療機関側にも算定のための要件があるため、すべての医療機関で処方できるわけではありませんが、当院は上記に該当するため処方することは可能です。
アプリ本体の保険償還価格は14,500円です。本体部分の自己負担額は、1割負担で1,450円、2割負担で2,900円、3割負担で4,350円です。
これとは別に、診察料、精神療法やカウンセリング料、プログラム医療機器等指導管理料などがかかる場合があります。自治体の子ども医療費助成の対象となる場合は、実際の自己負担が軽減されることがあります。
アプリ本体の保険算定は患者さん1人につき2回までで、2回目は初回から10週間以上空ける必要があります。
薬物治療にみられる食欲低下や血圧・脈拍への影響とは性質が異なりますが、有害事象や使用上の注意がないわけではありません。
国内臨床試験では、機器との関連があると判断された有害事象は2.8%(109例中3例)に認められ、内訳は欲求不満耐性低下・頭痛・悪心がそれぞれ1例(各0.9%)でした。いずれも軽度で回復し、機器との関連がある重篤な有害事象は報告されませんでした。
光過敏性てんかんやその既往がある場合は、使用の可否を慎重に判断します。また、ゲームやスマートフォンへの依存につながる可能性を完全には否定できないため、保護者と医療者が使用状況を確認することも大切です。
薬物療法を受けていることは必須条件ではありません。薬物療法を行うかどうかも含め、お子さんの症状、生活上の困りごと、本人・ご家族の希望を踏まえて判断します。
当院(上尾の森診療所 上尾駅前分院)では、ADHDの診断や治療についてご相談をお受けしています。エンデバーライドを含め、お子さんの症状や生活状況に合った治療方法を一緒に検討します。
当院での導入状況や使用の可否については、診察時にご確認ください。環境調整や心理社会的な治療を行ってからでないと処方できないため、初診時には処方できない可能性があること、反響が大きいため、お待たせすることがありうることなどご理解ください。
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