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「昔からずっと不安が強い」は、治療で楽になれるかもしれない

はじめに

 

「いつも何か悪いことが起きるんじゃないかと思ってしまう」

「心配しすぎだとわかっているのに、頭から離れない」

「ずっとこういう性格だから、これが普通だと思っていた」

 

こんなふうに感じている方は、少なくないと思います。

「不安が強い」という状態は、「性格の問題」として片付けられることが多いです。でも実は、慢性的に強い不安を感じている状態は、治療によって楽になれることがあります。

「昔からずっとこうだから」という言葉が、必要な治療を遠ざけてしまうことがある。今回はそのことをお伝えしたいと思います。

 

そもそも「不安」とは何か

 

不安は、もともと人間が生き延びるために必要な感情です。

危険を察知して体を緊張させ、逃げるか戦うかの準備をさせる。将来のリスクに備えて行動させる。不安があるからこそ、人は慎重に動き、危険を回避できます。

問題が起きるのは、その不安が「過剰・持続的・コントロールできない」状態になったときです。実際には大きなリスクがない場面でも警報が鳴り続け、心と体が常に緊張状態に置かれる。それが病的な不安の状態です。

 

日本人は、もともと不安を感じやすい

 

「日本人は心配性が多い」とよく言われますが、これには遺伝的な背景があることがわかっています。

脳内で感情の安定に関わる神経伝達物質「セロトニン」を調節する遺伝子(セロトニントランスポーター遺伝子)には、S型(不安を感じやすい)とL型(比較的安定しやすい)があります。

日本人はこのS型遺伝子の保有率が世界で最も高く、SS型(最も不安を感じやすいタイプ)が全体の約68%を占めます。アメリカ人のSS型は約18.8%であるのと比べると、その差は大きいです。

つまり、日本人の多くは遺伝的に「不安を感じやすい素地」を持っています。「自分は心配性すぎる」と感じていても、それはある意味、日本人として非常に一般的な状態とも言えます。

ただ、だからといって「仕方がない」「我慢するしかない」ということにはなりません。

 

「自分が病的なレベルかどうか」は、自分ではわからない

 

不安症状のある方からよく聞く言葉があります。

「他の人もこのくらい不安を感じているんじゃないか」 「自分が特別弱いわけじゃないと思う」 「これが普通だと思っていた」

不安の強さは、外から見えません。他の人が内心どのくらい不安を感じているか、自分では知りようがないのです。だから「自分の不安が病的なレベルかどうか」を自分で判断することは、実はとても難しいことです。

「みんなこのくらいは不安なんじゃないか」と思いながら、実は治療が必要な状態が長年続いていた、というケースは珍しくありません。

 

「生まれつきこういう性格」でも、治療の対象になりうる

 

「子どもの頃からずっと心配性だった」 「記憶がある頃からずっとこんな感じだ」

こういう場合、「これは自分の性格であり、病気ではない」と思いがちです。

でも、生まれつきの気質・遺伝的な素地であっても、それが日常生活に支障をきたしている場合は、治療の対象になります。むしろ「ずっとこうだった」という場合の方が、治療によって変化したときの実感が大きいことがあります。

「こんなに張り詰めなくていいんだ」「こんなに楽に過ごせるんだ」という気づきが、治療を通じて初めて得られる方も多くいらっしゃいます。

 

不安障害とは──診断の目安

 

不安が病的なレベルに達している状態を「不安障害(不安症)」と呼びます。代表的なものを紹介します。

全般性不安障害(GAD) さまざまなことについて、過剰な不安・心配が6か月以上続いている状態です。「特定のことだけでなく、仕事・健康・家族・お金・日常の些細なことまで、広く心配が止まらない」というのが特徴です。筋肉の緊張・疲れやすさ・不眠・集中力の低下などを伴います。

社交不安障害(社交不安症) 人前に出る・注目される・恥をかくかもしれない場面で、強い不安・恐怖を感じる状態です。「人前で話せない」「会食が苦手」「電話が怖い」などが典型的で、多くは10代半ばに発症し、「性格の問題」と誤解されやすいことで医療機関受診が遅れがちです。

パニック障害 突然の激しい動悸・息苦しさ・めまいを伴うパニック発作を繰り返し、「また起きるのでは」という予期不安から、特定の場所や状況を避けるようになる状態です。

特定の不安障害 高所・閉所・特定の動物など、特定のものに強い恐怖を感じる状態です。

以下のような状態が続いているようであれば、不安障害の可能性を考えてみてください。

  • 心配しすぎだとわかっていても、止められない
  • 常に「何か悪いことが起きるのでは」と思っている
  • 人前に出ること・注目されることへの恐怖が強い
  • 緊張が続き、体がこわばっている
  • 不安のために、やりたいことを避けてしまっている
  • 眠れない、疲れがとれない日が続いている

治療のアプローチ

 

不安障害の治療は、大きく「心理療法」と「薬物療法」の2つです。

心理療法(認知行動療法)

ガイドラインでは、不安障害に対する心理療法として認知行動療法(CBT)が第一選択として推奨されています。不安を引き起こす思考パターンに気づき、より現実的な考え方に変えていくアプローチです。「怖いと思っていたことに少しずつ取り組む(曝露)」ことで、不安を和らげていきます。

ただし現実問題として、専門的な認知行動療法を提供できる医療機関は限られており、カウンセリングの予約が取りにくい状況が続いています。

薬物療法(SSRI)

薬物療法の第一選択は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)です。抗うつ薬として知られる薬ですが、不安障害にも非常に有効です。効果が出るまでに最短2〜3週間、最長8週間程度かかりますが、効き始めると十分に効果が持続し、依存性も低いため第一選択として推奨されています。

SSRIの飲み始めに一時的に不安が増すことがあるため、不安障害に対して使用する場合はうつ病に用いるよりも少ない用量から開始し、少しずつ増量していくことが望ましいとされています。

 

薬を飲むことで、「別の自分」に気づくことがある

 

カウンセリングは有効ですが、予約が埋まっていてすぐに始められないことがあります。そういう状況の中で、薬から始めることで大きく変わる方がいます。

SSRIを飲み始めてしばらくすると、「なんとなく、以前より張り詰めていない」「同じ状況なのに、以前ほど怖くない」という感覚が出てくることがあります。ドラマチックな変化ではなく、「あれ、少し楽かもしれない」という静かな変化です。

「ずっと悪いことが起きるのではとビクビクして過ごしていたのが、少しホッとした気持ちで日々を送れるようになった」という感想をおっしゃる方がいます。それは薬が「気持ちを変えた」というより、「もともとの自分のキャパシティをちゃんと使えるようになった」という感覚に近いかもしれません。

 

「昔からこうだから」と諦める前に

 

「生まれつき心配性だから仕方ない」 「ずっとこうやって生きてきたから、これが普通だ」

そう思って、ずっと張り詰めたまま過ごしてきた方に、一度だけ考えてみてほしいことがあります。

もしその張り詰めた感覚が、治療によって少し和らいだとしたら。もう少し力を抜いて、のびのびと過ごせるようになったとしたら。

「そんなことができるとは思わなかった」という方が、実際にいらっしゃいます。

「病気かどうかわからない」「受診するほどではないかもしれない」という段階でも構いません。一度、話してみてください。

 


当院(上尾の森診療所 上尾駅前分院)では、不安が強い・心配が止まらないというご相談をお受けしています。「昔からこうだから」という方も、ぜひ一度ご相談ください。

上尾駅から徒歩2分、平日夜21時まで診療しています。

WEB予約・お電話でのご予約はトップページよりご確認ください。


上尾の森診療所 上尾駅前分院 / 埼玉県上尾市宮本町3-2  Ageo・Town 209-4/ TEL: 048-783-2512 診療時間:平日13:00〜21:00(最終受付20:30)/ 土曜9:00〜17:00

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急患対応可能

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「昔からずっと不安が強い」は、治療で楽になれるかもしれない

はじめに

 

「いつも何か悪いことが起きるんじゃないかと思ってしまう」

「心配しすぎだとわかっているのに、頭から離れない」

「ずっとこういう性格だから、これが普通だと思っていた」

 

こんなふうに感じている方は、少なくないと思います。

「不安が強い」という状態は、「性格の問題」として片付けられることが多いです。でも実は、慢性的に強い不安を感じている状態は、治療によって楽になれることがあります。

「昔からずっとこうだから」という言葉が、必要な治療を遠ざけてしまうことがある。今回はそのことをお伝えしたいと思います。

 

そもそも「不安」とは何か

 

不安は、もともと人間が生き延びるために必要な感情です。

危険を察知して体を緊張させ、逃げるか戦うかの準備をさせる。将来のリスクに備えて行動させる。不安があるからこそ、人は慎重に動き、危険を回避できます。

問題が起きるのは、その不安が「過剰・持続的・コントロールできない」状態になったときです。実際には大きなリスクがない場面でも警報が鳴り続け、心と体が常に緊張状態に置かれる。それが病的な不安の状態です。

 

日本人は、もともと不安を感じやすい

 

「日本人は心配性が多い」とよく言われますが、これには遺伝的な背景があることがわかっています。

脳内で感情の安定に関わる神経伝達物質「セロトニン」を調節する遺伝子(セロトニントランスポーター遺伝子)には、S型(不安を感じやすい)とL型(比較的安定しやすい)があります。

日本人はこのS型遺伝子の保有率が世界で最も高く、SS型(最も不安を感じやすいタイプ)が全体の約68%を占めます。アメリカ人のSS型は約18.8%であるのと比べると、その差は大きいです。

つまり、日本人の多くは遺伝的に「不安を感じやすい素地」を持っています。「自分は心配性すぎる」と感じていても、それはある意味、日本人として非常に一般的な状態とも言えます。

ただ、だからといって「仕方がない」「我慢するしかない」ということにはなりません。

 

「自分が病的なレベルかどうか」は、自分ではわからない

 

不安症状のある方からよく聞く言葉があります。

「他の人もこのくらい不安を感じているんじゃないか」 「自分が特別弱いわけじゃないと思う」 「これが普通だと思っていた」

不安の強さは、外から見えません。他の人が内心どのくらい不安を感じているか、自分では知りようがないのです。だから「自分の不安が病的なレベルかどうか」を自分で判断することは、実はとても難しいことです。

「みんなこのくらいは不安なんじゃないか」と思いながら、実は治療が必要な状態が長年続いていた、というケースは珍しくありません。

 

「生まれつきこういう性格」でも、治療の対象になりうる

 

「子どもの頃からずっと心配性だった」 「記憶がある頃からずっとこんな感じだ」

こういう場合、「これは自分の性格であり、病気ではない」と思いがちです。

でも、生まれつきの気質・遺伝的な素地であっても、それが日常生活に支障をきたしている場合は、治療の対象になります。むしろ「ずっとこうだった」という場合の方が、治療によって変化したときの実感が大きいことがあります。

「こんなに張り詰めなくていいんだ」「こんなに楽に過ごせるんだ」という気づきが、治療を通じて初めて得られる方も多くいらっしゃいます。

 

不安障害とは──診断の目安

 

不安が病的なレベルに達している状態を「不安障害(不安症)」と呼びます。代表的なものを紹介します。

全般性不安障害(GAD) さまざまなことについて、過剰な不安・心配が6か月以上続いている状態です。「特定のことだけでなく、仕事・健康・家族・お金・日常の些細なことまで、広く心配が止まらない」というのが特徴です。筋肉の緊張・疲れやすさ・不眠・集中力の低下などを伴います。

社交不安障害(社交不安症) 人前に出る・注目される・恥をかくかもしれない場面で、強い不安・恐怖を感じる状態です。「人前で話せない」「会食が苦手」「電話が怖い」などが典型的で、多くは10代半ばに発症し、「性格の問題」と誤解されやすいことで医療機関受診が遅れがちです。

パニック障害 突然の激しい動悸・息苦しさ・めまいを伴うパニック発作を繰り返し、「また起きるのでは」という予期不安から、特定の場所や状況を避けるようになる状態です。

特定の不安障害 高所・閉所・特定の動物など、特定のものに強い恐怖を感じる状態です。

以下のような状態が続いているようであれば、不安障害の可能性を考えてみてください。

治療のアプローチ

 

不安障害の治療は、大きく「心理療法」と「薬物療法」の2つです。

心理療法(認知行動療法)

ガイドラインでは、不安障害に対する心理療法として認知行動療法(CBT)が第一選択として推奨されています。不安を引き起こす思考パターンに気づき、より現実的な考え方に変えていくアプローチです。「怖いと思っていたことに少しずつ取り組む(曝露)」ことで、不安を和らげていきます。

ただし現実問題として、専門的な認知行動療法を提供できる医療機関は限られており、カウンセリングの予約が取りにくい状況が続いています。

薬物療法(SSRI)

薬物療法の第一選択は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)です。抗うつ薬として知られる薬ですが、不安障害にも非常に有効です。効果が出るまでに最短2〜3週間、最長8週間程度かかりますが、効き始めると十分に効果が持続し、依存性も低いため第一選択として推奨されています。

SSRIの飲み始めに一時的に不安が増すことがあるため、不安障害に対して使用する場合はうつ病に用いるよりも少ない用量から開始し、少しずつ増量していくことが望ましいとされています。

 

薬を飲むことで、「別の自分」に気づくことがある

 

カウンセリングは有効ですが、予約が埋まっていてすぐに始められないことがあります。そういう状況の中で、薬から始めることで大きく変わる方がいます。

SSRIを飲み始めてしばらくすると、「なんとなく、以前より張り詰めていない」「同じ状況なのに、以前ほど怖くない」という感覚が出てくることがあります。ドラマチックな変化ではなく、「あれ、少し楽かもしれない」という静かな変化です。

「ずっと悪いことが起きるのではとビクビクして過ごしていたのが、少しホッとした気持ちで日々を送れるようになった」という感想をおっしゃる方がいます。それは薬が「気持ちを変えた」というより、「もともとの自分のキャパシティをちゃんと使えるようになった」という感覚に近いかもしれません。

 

「昔からこうだから」と諦める前に

 

「生まれつき心配性だから仕方ない」 「ずっとこうやって生きてきたから、これが普通だ」

そう思って、ずっと張り詰めたまま過ごしてきた方に、一度だけ考えてみてほしいことがあります。

もしその張り詰めた感覚が、治療によって少し和らいだとしたら。もう少し力を抜いて、のびのびと過ごせるようになったとしたら。

「そんなことができるとは思わなかった」という方が、実際にいらっしゃいます。

「病気かどうかわからない」「受診するほどではないかもしれない」という段階でも構いません。一度、話してみてください。

 


当院(上尾の森診療所 上尾駅前分院)では、不安が強い・心配が止まらないというご相談をお受けしています。「昔からこうだから」という方も、ぜひ一度ご相談ください。

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