「授業中に集中できない」「落ち着きがなくてじっとしていられない」「すぐボーっとしている」
こうしたお子さんの様子を見て、「もしかしてADHDかも」と思った経験のある保護者の方は少なくないと思います。
もちろんADHDという可能性もあるのですが、実は鼻や喉の問題が原因で、ADHDにそっくりな症状が出ているケースがあることをご存知でしょうか。当院に初診となった児童の方にもお鼻が苦しそうだなというお子さんが少なくありませんし、いったん耳鼻科で治療することを勧めるケースもあります。
今回は、子どもの集中力や落ち着きに意外な形で影響する「アデノイド肥大」と「アレルギー性鼻炎」についてお伝えします。
アデノイド(咽頭扁桃)とは、鼻の奥の突き当たり、喉との境目あたりにあるリンパ組織のかたまりです。口を開けても見えない場所にあるので、存在を知らない方も多いかもしれません。
アデノイドはウイルスや細菌から体を守る免疫機能を持っており、子どもの頃に大きくなるのは自然なことです。一般的には2〜3歳頃から大きくなり始め、6歳頃にピークを迎え、その後徐々に縮小し、思春期頃には小さくなっていきます。
問題が起きるのは、このアデノイドが必要以上に肥大して、鼻の空気の通り道を塞いでしまうときです。
アデノイドが肥大すると、鼻からの空気の流れが悪くなり、口呼吸が増えます。これをきっかけに、さまざまな問題が連鎖的に起きていきます。
鼻・耳・喉の症状
睡眠への影響
日中の症状(ここが重要)
睡眠時無呼吸症候群や慢性的な睡眠不足が続くと、子どもは日中に強い眠気や疲労を感じます。子どもは眠いとき、大人のように「眠い」と感じるより、落ち着きがなくなったり、衝動的になったりすることが多いとされています。
このため、アデノイド肥大による睡眠障害が原因で、ADHDに見えるような「不注意」「多動」「集中力のなさ」が現れることがあります。
またアデノイド肥大があると滲出性中耳炎になりやすく、軽度の難聴が起きることがあります。聞こえにくいために授業に集中できない、先生の話が聞き取れないというケースも、ADHDや学習障害に見えてしまうことがあります。
ここからは、アデノイドとは別に、アレルギー性鼻炎そのものと子どもの集中力・行動の問題の関係についてお伝えします。
実はこの分野、近年研究が急速に進んでいます。
2025年9月に科学誌『International Journal of Environmental Research and Public Health』に掲載された韓国チュンナム国立大学の研究では、韓国の全国保険データを使って6〜19歳の子ども・若者を10年間(2009〜2018年)にわたって大規模に分析しました。
その結果、アレルギー性鼻炎のある子どもは、そうでない子どもに比べてADHDの治療薬を処方される割合が有意に高いことが示されました。研究者たちは、鼻水・鼻づまりによる集中力の低下がADHDのように見えてしまっている可能性を指摘しています。
2014年に発表された韓国の研究(Lee et al., Psychiatry Investigation)では、アレルギー性鼻炎の子どもたちを対象に、ADHD様の行動問題との関連を調べました。その結果、アレルギー性鼻炎がある子どもに、ADHD様の行動問題が見られやすかったことが報告されています。
また6〜12歳のアレルギー性鼻炎の子ども455名を対象にした研究(2019年)では、鼻炎の症状が強い子ほど、不注意・多動性のスコアが有意に高いことが示されました。
2025年に発表された横断研究では、ADHD児222名(うち93名がアレルギー疾患合併)を分析。アレルギー疾患を合併しているADHD児は、合併していないADHD児と比べて多動性・衝動性のスコアと危険行動のスコアが有意に高かったことが示されています。
特にアレルギー性鼻炎は睡眠呼吸障害との関連が強く、それが行動面にも影響していると考えられています。
現時点でいくつかのメカニズムが考えられています。
① 鼻づまり・不快感による直接的な影響 鼻がつまって呼吸しにくい、くしゃみが止まらない、目がかゆい、という不快な状態が続くと、それだけで集中力は落ちます。授業中に鼻をかみ続けたり、かゆさに気をとられたりすることで、注意が散漫になりやすくなります。
② 睡眠の質の低下 アレルギー性鼻炎による夜間の鼻づまりは睡眠の質を大きく下げます。慢性的な睡眠不足や睡眠の質低下は、翌日の集中力・感情コントロール・行動の落ち着きに直結します。
③ 免疫と脳のつながり(炎症仮説) 近年注目されているのが、アレルギー反応に伴う免疫系の活性化が脳の神経機能にも影響する可能性です。アレルギー反応で増えるサイトカイン(炎症性物質)が脳内の神経伝達にも影響しうることが研究で示されつつあります。ただし、これはまだ研究途上の段階であり、因果関係が確立しているわけではありません。
以下のサインが複数当てはまる場合、アデノイド肥大や睡眠障害・アレルギー性鼻炎の影響を疑ってみてください。
アデノイド肥大・アレルギー性鼻炎の症状がある場合は、まず耳鼻咽喉科への受診をお勧めします。
アレルギー性鼻炎の治療(抗アレルギー薬・点鼻薬・舌下免疫療法など)を進めることで、睡眠の質が改善し、結果として行動面が落ち着くケースがあります。
子どもの「落ち着きのなさ」「集中力のなさ」には、さまざまな原因があります。
ADHDなどの発達障害の可能性を考えることも大切ですが、その前に「ちゃんと眠れているか」「鼻で呼吸できているか」「鼻炎の症状がひどくないか」という視点も持っておくと良いと思います。
「最近なんか集中力がなくなったな」「落ち着きがなくなってきた気がする」という変化に気づいたときは、発達の問題だけでなく、耳鼻科的な問題・アレルギーも一つの可能性として考えてみてください。
当院(上尾の森診療所 上尾駅前分院)では、お子さんの発達・集中力・落ち着きに関するご相談をお受けしています。耳鼻科的な問題やアレルギーが背景にある可能性も含めて、一緒に整理させてください。必要な場合は適切な医療機関へのご紹介も行っています。
上尾駅から徒歩2分、平日夜21時まで診療しています。
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